「私の個人主義」は工場おじさんにも考え方の自由をくれる

本のレビュー

「私の個人主義」は夏目漱石さんが大正3年に学習院で講演した内容を文字起こししたものです

学習院=上流階級の子供が通う学校の事

僕なりにこの本を要約すると

  • 他人の意見を鵜呑みにするな
  • 自分本位で考える
  • 自分を尊重するように他人も尊重しなくっちゃ

工場おじさんになんの役に立つの?と思われるかもしれないが

講演内容は社会に出たらリーダーになるであろう生徒達に向けて

  • 自分が社会に出てからの苦悩と人生で参考にしてほしい考え方
  • 上流階級なので必ずついてくる権力の使い方
  • お金の使い方

社畜な僕には一見関係なさそうだけど夏目さんの自虐も入ってすんなり自分のことのようにアドバイスが入ってきます

ヌシ
ヌシ

お金の使い方に関してはまあ関係ない、貧乏だし

大正時代に大学まで出て小、中、高、大で教鞭をとっていたエリートだけど生き方や仕事での悩みは現代でも通じるところがあります

おっさんでも若者でも人生に目的がなくモヤモヤされている人には刺激がある内容です

夏目漱石の自虐

この講演ではご自身の半生を振り返って

  • 学生の時は終始怠けてのらくらしてた
  • 学校を卒業する間際まで社会に出てなにをしようか考えなかった迂闊もの
  • バカの癇癪持ち

と自虐しています

問題を先延ばししてどうしようもなくなったり問題が面倒になり投げやりになっていたようですね

謙遜もありつつ多分自覚する事があったのでしょう

歴史に名前が残る人でも功績以外の個性があるように感じます

お札の人より人間味があるし違う世界の人の話じゃないように僕には聞こえました

夏目漱石の苦悩

私はこの世に生まれた以上なにかしなければならん、といって何をして好いか少しも見当がつかない。私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ちすくんでしまったのです。

そうしてどこからか一筋の日光が射して込まないかしらんという希望よりも、こちらから探照灯を用いてたった一条ひとすじで好いから先まで明らかに見たいという気がしました。ところが不幸にしてどちらの方角を眺めてもぼんやりしているのです。ぼうっとしているのです。あたかもふくろの中に詰められて出る事のできない人のような気持がするのです。

私は私の手にただ一本のきりさえあればどこか一ヵ所突き破って見せるのだがと、焦燥あせり抜いたのですが、あいにくそのきりは人から与えられる事もなく、また自分で発見する訳にも行かず、ただ腹の底ではこの先自分はどうなるだろうと思って、人知れず陰鬱な日を送ったのであります。

この不安を抱いたまま大学を卒業し、教師になり、国から言われたままイギリスまで留学をしました

教師として働いていた時はこの不安があったためか教師というものに少しも興味がわかない、教場で教えることがすでに面倒だともいっています

あれほどの著名人でもお腹に虚しさや不愉快さを抱えて悶々としながら仕事をしていた事がうかがえます

夏目漱石の自己本位

漱石は英文学を専攻していてイギリスへ留学後この不安を取り除こうと四苦八苦しますがとうとうロンドンではみつからず絶望しました

しかしその時はじめて文学の概念を根本的に自力で作り上げるしかない事を悟ったのです

今まで他人本位の考え方をしていたが、他人の批評は参考にすれど自分の意見をまげてはいけない自己本位という考え方を思いつきやっと自分の進むべき道がみえたのです

大正初期はイギリスが最も発達した国だったため西洋の人がいいと言ったら全部いいみたいな風潮があったようです

西洋人がいいといった書評を鵜呑みにせず日本人としての夏目漱石の意見を考える

しかし本場の批評家がいいと評価した書物に日本人が悪いといっても矛盾がおきる

説得力にかけるといってもいい

その矛盾を国の習慣や文化の違い、国民の性格から検証する

矛盾をなくす事はできなくても何が矛盾しているのかは日本に向けて説明ができる

夏目漱石はこのことに気づき自身のふくろきりで突き破りました

夏目漱石の忠告

もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏み潰すまで進まなければだめですよ。

もっとも進んで好いか解らないのだから、何かにぶつかる所まで行くよりほかに仕方がないのです。

私は忠告がましい事をあなた方に強いる気はまるでありませんが、それが将来あなたがたの幸福の一つになるかも知れないと思うと黙っていられなくなるのです。

夏目漱石は自己本位という考え方やそこにいきつくまでの過程を生徒たちに幸せの一つの可能性として忠告しました

人生で成功をつかむ方法じゃない

他人から見ていかにくだらなくても、それは他人の批評と観察で本人には損害がない

自分のふくろを突き破るきりをどうか探してほしい

ああここにおれの進むべき道があった!ようやく掘り当てた!

こういう感投詞を心から叫び出される時、あなた方は始めて心を安んずる事ができるのでしょう。その叫び声とともにむくむく首をもたげてくるのではありませんか。

夏目漱石の権力の考え方

権力とは自分の個性を他人の頭の上に無理やりにおしつける道具です

権力を行使している悪い例としてこんな話をしました

  • 兄はアウトドアで釣り好き、弟はインドアで読書好き
  • 兄から見た弟は引き込まりで忌まわしいので無理に釣りに連れていき気持ちが悪いフナとかを釣って帰ってくる
  • 弟の性質が変わるかと言ったら逆に釣りへの反抗心が強くなる

兄の個性が弟を圧迫して無理に釣りをさせています

さっきの自己本位は自分の個性を発展するものですが、それだけ自分の個性を尊重するのなら他人に対しても他人の個性を尊重しなければいけない

自由を享有しているのならほかにも同等の自由をあたえなければいけない

権力には義務が付着する

  • 夏目漱石が高い壇上から二時間なり講演して静粛にきいてもらう権利を持つ以上は静粛にさせるだけの説をのべなければならない
  • 夏目漱石がお客さん、生徒たち学校側が主人、だから静粛にしなくてはならない
  • これは上っ面だけの礼式で精神にはなんの影響もない習慣のようなもの

生徒でも二時間の時間をもらう権利を行使する以上はそれだけ聞かせるないようでなければならないという事だと思います

すべてにおいてこの考えを実行していたらきっと身動きとりずらいですけど権利(権力)には表裏一体で義務が付いてくること忘れないようにしたいですね

おじさんになってきたら仕事でも怒られる事より人に叱る事が増えてきています

叱る権利があるのは対象の人に対してしっかり教える義務、その権利を使うのに裏の義務をはたせるように気を付けたい

さいごに

この講演は生徒向けに優しく「人生の先輩」としての夏目漱石だったのかと思う

実際の夏目漱石は親族の不幸や自身の正義感が強い性格のためか極度の神経衰弱を度々患らっていた

妻がヒステリーになって自殺未遂したり留学中狂ったと言われるほどに心身ともに弱っていたとも

坊ちゃんなどの名作を世に残して自分本位とする考え方を後世に残して

自分の人生は目的に走っていたがハッピーだったかは本人に聞かないと分からない

それでもこの本から学べることはあります

SNS上での炎上、自由の勘違いのような今でも通じる話も

iPhoneに入ってるブックに無料であるので暇つぶしにでも是非読んでみてほしい

60ページ程なので読書が苦手な人でも読みやすいです

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